このブログでは以前、AI を使って書いた小説を「小説家になろう」や「カクヨム」に投稿できるのか、各サイトのルールを読みました。投稿の次に気になってくるのが、文学賞や新人賞に応募できるのかという点です。
2026 年は、この点で大きな動きがありました。日経「星新一賞」では、2026 年 2 月に発表された第 13 回の一般部門で、受賞 4 作品のうち 3 作品が創作に AI を活用していたと報じられています。一方で、小説投稿サイトのアルファポリスは、AI 生成作品のコンテスト参加を禁止し、受賞が決まった作品の書籍化を取り消したと伝えられました。
そこで、星新一賞の公式サイトにある応募規定と、アルファポリスのコンテスト要項を中心に、AI の扱いについて何が書かれているのかを確かめました。確認は2026年10月28日時点です。
※ 本記事は各賞が公開している募集要項などを整理したものです。個別の作品が応募できるかどうかを判断するものではありません。募集要項は回ごとに変わるため、応募の前には必ず最新の要項を確認してください。
先に全体を並べると
読んだ範囲では、AI の扱いは大きく 3 つに分かれていました。
| 型 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 申告すれば可 | AI の利用を認めたうえで、使い方の申告や記録を求める | 日経「星新一賞」、文藝賞 |
| 補助的な利用まで可 | プロット作成や校正などの補助は認める。本文を AI に書かせるのは不可、または権利侵害のおそれがあれば対象外 | 横溝正史ミステリ&ホラー大賞、GA 文庫大賞 |
| AI 生成作品は不可 | 作品の大部分を AI で作ったものはエントリーできない。補助的な利用は対象外 | アルファポリスの各コンテスト |
どの型でも共通していたのは、AI を使ったかどうかを、後から確かめられる形にしておくことを求めている点でした。具体的に見ていきます。
星新一賞:人工知能の応募も受け付けるが、記録がなければ失格
日経「星新一賞」は、応募規定の全部門共通の項目で「人間以外(人工知能等)の応募作品も受付けます」と明記しています。ただしその場合は、連絡が取れる保護者か代理人を立てる必要があります。第 14 回は 2026 年 10 月 6 日に締め切られ、一般部門 2,395 作品、ジュニア部門 330 作品、計 2,725 作品の応募があったと公式サイトで発表されていました。
そのうえで、応募規定には「生成AIを利用しての応募について」という独立した項目があります。ここには、AI を使う人が守るべきことがかなり具体的に書かれていました。
| 項目 | 応募規定に書かれていたこと |
|---|---|
| ツールの規約 | 利用する生成 AI やツールの規約・ライセンスが、応募や書籍化、商用利用などを禁止している場合は応募できない |
| 入力の禁止 | 許可なく特定の作者や作品を重点的に学習させた特化型 AI を使わない。他者の著作物や作家名・作品名を AI の入力に使わない |
| 記録 | プロンプトとその出力の原文、使ったツールの情報、参照したテキストなどを必ず記録する。提出できない場合や説明が不十分な場合は失格 |
| 加筆・修正 | AI の文章はそのまま使わず、人間が加筆・修正する。修正の前後の文章も記録する |
| 申告 | 応募フォームに、使った生成 AI と制作過程を 500 文字以内で具体的に書く |
| 審査 | 最終選考に残った AI 利用作品は事務局が精査し、規定違反が疑われれば失格。受賞した場合は AI の利用方法が公開されることがある |
| 申告漏れ | AI を使ったのに申告せず、後から明らかになった場合は受賞の取り消しと電子書籍からの削除 |
注目したいのは「記録」の項目です。AI を使うこと自体は認められていても、プロンプトや修正前後の文章を残していなければ、それだけで失格になり得ます。応募規定は、この規約が文化庁の著作権セミナー「AIと著作権Ⅱ」の内容を参考にしているとも書いていました。
また、規定には「創作的寄与を加えるように努めてください」とあり、その例として、具体的に指示する、出力を見て指示を直す試行を繰り返す、複数の出力から選ぶ、出力に人間が加筆・修正する、といった行為が挙げられていました。AI に一度書かせて終わり、という使い方は想定されていないことが分かります。
アルファポリス:「大部分を AI で作った作品」はエントリーできない
小説投稿サイトのアルファポリスは、2025 年 11 月 18 日に、作品の大部分を生成 AI ツールで作ったものはコンテストへの参加を禁止すると発表したと報じられています。一定のポイントを集めた作品が行える「出版申請」も同じ扱いです。
現在のコンテスト要項には、「AI生成作品はエントリーできません」と書かれていました。対象になるのは、作品の大部分において、文章(漫画や絵本では画像も含む)の作成を主な目的として生成 AI ツールを使って作られた作品です。一方で、プロットの検討や文章の校正など、補助的な利用にとどまる場合は対象外とされています。
この禁止の前後には、実際に受賞作の扱いが変わった例も報じられました。アルファポリスの第 18 回ファンタジー小説大賞で大賞などを受賞した作品について、内容の大部分が生成 AI で作られていたとして、予定されていた書籍化と漫画化が取りやめになったというものです。受賞が決まったあとでも、AI 生成作品だと分かれば出版されない、ということが実際に起きていました。
出版社の新人賞は「補助まで」が多い
出版社が主催する新人賞についても、公募情報誌「公募ガイド」が 2026 年の募集要項をまとめていました。その整理によると、各賞の書き方には違いがあります。
| 賞 | 公募ガイドが紹介していた規定の内容 |
|---|---|
| 横溝正史ミステリ&ホラー大賞(KADOKAWA) | プロット作成や表現チェックのための補助的な利用は不可としない。第三者の知的財産権を侵害するおそれがあれば選考対象外 |
| 文藝賞(河出書房新社) | 生成 AI を使って執筆した場合は、略歴に具体的な使用方法を書く |
| 群像新人文学賞(講談社) | 著作権侵害にあたる生成 AI の使用は禁止。最終候補作は選考委員会が AI の使用の有無と方法を確認 |
| GA 文庫大賞 | 生成 AI の利用は校正やネタ出し程度に限る。使った場合は応募時に用い方を書く |
本文を AI に書かせることまで認めているように読めるのは、今回見た中では星新一賞と文藝賞くらいでした。多くの賞は、アイデア出しや校正といった補助までなら認める、という書き方です。
どの賞にも共通していたこと
型は違っても、読んだ要項には共通点が 2 つありました。
一つは、使い方を説明できるようにしておくことです。星新一賞は 500 文字の申告と記録の保存を、文藝賞は略歴への記載を、GA 文庫大賞は応募時の記載を求めていました。群像新人文学賞のように、最終候補になった段階で確認するという賞もあります。
もう一つは、後から分かった場合の扱いが書かれていることです。星新一賞は申告漏れが判明すれば受賞取り消し、アルファポリスは受賞後でも書籍化の取りやめ、という形で、受賞が決まったあとにも取り消しがあり得ることを明示していました。応募の時点で黙っていれば済む、という仕組みにはなっていません。
投稿サイトで AI の利用をどう申告するかについては、なろうとカクヨムのルールを読んだ記事にまとめています。
調べても分からなかったこと
| 疑問 | 今回読んだ範囲での状態 |
|---|---|
| 「補助的な利用」と「AI 生成」の境目は、どの程度の割合か | アルファポリスは「大部分」と書くのみで、数値の基準はない |
| 各賞は、AI を使ったかどうかをどうやって判断するのか | 星新一賞は事務局が精査するとあるが、具体的な方法は書かれていない |
| AI で文章を整えただけの作品に、申告が必要か | 賞ごとに書き方が違い、星新一賞の規定では利用全般が申告の対象と読める |
| 規定がない賞に応募するとき、どう考えればよいか | 今回読んだ要項からは判断できない。主催者への確認が必要 |
このあたりは、応募する賞の事務局に問い合わせるのが確実です。星新一賞のように、要項の中で「不明な点は事務局に相談」と案内している賞もあります。
まとめ
読んで分かったのは、AI で書いた小説の応募は賞によって「申告すれば可」「補助まで可」「AI 生成作品は不可」に分かれていたということ。星新一賞は人工知能の応募まで受け付ける一方で、プロンプトや修正前後の文章の記録がなければ失格、申告漏れが分かれば受賞取り消しとしていました。アルファポリスは大部分を AI で作った作品のエントリーを禁止し、補助的な利用は対象外としていました。
AI を使って応募するなら、使い方を最初から記録しておくこと。どの賞の要項を読んでも、それが前提になっていました。今回の資料から言えるのは、ここまででした。
※ 本記事の内容は2026年10月28日時点で確認した公開情報です。各賞の募集要項は回ごとに変更されることがあるため、応募の前に最新の要項を確認してください。



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