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会社の資料を AI に入れていいのか、各サービスの規約を調べた(2026年8月時点)

オフィスの机に置かれた書類とノートパソコン AI・生成AI

質問サイトを見ていると、同じ構図の相談が繰り返し投稿されています。「効率化のために過去の資料を AI に読ませたい」と提案した社員と、「会社の資産だから駄目だ」と止める上司。逆に、上司が社外秘のデータをそのまま入力しているのを見て不安になった、という相談もあります。

共通しているのは社内に生成 AI の規定がなく、各自が判断しているという状況です。

そこで、主要サービスの公式ヘルプに何が書かれているかを調べて整理しました。調査は2026年8月5日時点のものです。各社の仕様と規約は改定されるため、実際の判断前に最新版をご確認ください。

※ 本記事は公開されている各社の規約・ヘルプの整理であり、法的助言ではありません。社内規程の策定など判断が大きい場面では、所属組織の情報管理部門や専門家にご確認ください。

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論点は「学習に使われるか」だけではない

この話題は「入力したデータが AI の学習に使われるか」に集中しがちですが、実際に確認が必要な点は三つの層に分かれます。

  • 学習に使われるか——モデルの改善に利用されるかどうか
  • 誰かに見られるか——人間によるレビューの有無
  • どれだけ残るか——保存期間と、設定を変えた後の扱い

学習をオフにしても、残りの二つがゼロになるわけではありません。ここが「設定を切ったから大丈夫」と食い違う原因になっています。

サービス別の記載(2026年8月5日時点)

サービス個人向けプラン組織向け
ChatGPT初期状態で学習に利用。設定でオフにできるTeam・Enterprise・Education は既定で対象外
Geminiアクティビティがオンなら利用。オフにできるWorkspace の有料ライセンスは保護が適用
Copilot個人アカウントでは利用される場合がある職場・学校アカウントは既定で対象外

表にすると同じように見えますが、細部の扱いは各社で異なります。順に見ていきます。

ChatGPT — 設定は「これ以降の会話」に効く

個人向けプラン(Free・Plus・Pro)では、初期状態で入力内容がモデルの改善に利用される設定になっています。「設定 → データコントロール → 全員のためにモデルを改善する」をオフにすると、以降の新規会話は学習に使われないと公式ヘルプに記載されています。

この設定はアカウント単位で、端末をまたいで反映されます。ただし効くのは新規の会話からです。それ以前に入力したものが遡って除外されるわけではありません。

Team・Enterprise・Education の各プランについては、既定で学習の対象外であると明記されています。管理者が設定をしなくても適用されるため、設定漏れという事象そのものが発生しません。

Gemini — オフにしても残るものがある

Google の公式ヘルプには、サービスの提供・改善のために人間によるレビューを行いながらユーザーのアクティビティを利用すると記載されています。そしてレビューされたデータはアカウントと切り離された形で3年間保存されるとされています。

アクティビティ自体は18か月で自動削除され、3か月・36か月への変更や自動削除の停止も選べます。設定をオフにした場合でも、サービス提供のために会話は最大72時間アカウントに保存されると記載されています。

個人向けの有料プランに入っても、この扱いは個人向けの規則が適用されます。料金を払えば自動的に学習対象から外れる、という構造ではありません。組織で使う場合は Workspace の有料ライセンスが該当します。

Copilot — 見分けるのはプランではなくアカウント

Copilot は同じ名前で複数の入口があります。個人の Microsoft アカウントで使う版と、勤務先が発行するアカウントでサインインして使う版です。

後者では、入力内容や参照された社内データが基盤モデルの学習には使われないとされています。追加の設定は不要で、契約上の保護として適用されます。問題になるのは、社員が個人アカウントのまま業務に使っている場合です。画面は似ていても扱いが違います。

もう一点、混同されやすい論点があります。「学習に使われない」ことと「見えてはいけない情報が見えない」ことは別です。Copilot は利用者がすでに持っている権限の範囲で社内データを参照するため、共有範囲が広すぎるフォルダがあれば、その内容が回答に現れやすくなります。これは AI を入れる前から存在していた状態が可視化されたものです。

結局、どこで線が引かれるのか

三社の記載を並べると、分かれ目はプランの価格ではなく組織契約かどうかにあります。

個人アカウント利用者本人が設定する。設定漏れは本人にも分からない
組織契約既定で学習対象外。管理者が一括して統制できる

上司が止める理由は、多くの場合ここにあります。個人アカウントでの利用は、会社側が状態を確認できません。誰がどの設定で何を入力したかを後から追う手段がなく、問題が起きたときに範囲を特定できない。「会社の資産だから」という言い方の中身は、この統制の欠如であることが多いといえます。

一方で、「AI そのものが危険だから使わない」という結論も、公式の記載からは導かれません。組織契約であれば既定で学習対象外と明記されています。争点はツールの是非ではなく、契約形態と運用です。

すでに入力してしまった場合

検索でこの記事にたどり着く方の中には、入力した後で不安になった方もいると思います。各社が用意している削除・除外の手段と、その範囲を整理します。

ChatGPT では、削除したチャットは表示から即座に消え、匿名化済みの場合や法的義務による保持が必要な場合を除き、30日以内にシステムから完全に削除されると公式ヘルプに記載されています。削除したチャットは復元できず、UI・API・サポートのいずれからも取得できないとされています。

ここで区別が必要なのは、アーカイブは削除ではないという点です。アーカイブしたチャットは表示リストから外れるだけで、アカウントには残ります。

Gemini では、アクティビティの確認と削除がいつでも可能とされています。ただし前述のとおり、すでに人によるレビューを経たデータはアカウントと切り離された形で3年間保存されると記載されており、この部分は会話を削除しても対象が変わりません。

三社に共通して言えるのは、削除操作は「これ以降の扱い」と「表示上の履歴」に効くもので、すでに送信された事実そのものを取り消す機能ではないということです。

顧客から預かった情報を入力してしまった場合は、削除操作より先に確認することがあります。取引先との契約に、情報の外部送信について報告義務が定められている場合があります。自分の判断で消して終わりにすると、後から経緯を説明できなくなります。何をいつ入力したかを記録に残したうえで、社内の情報管理部門に相談する順序になります。

社内に規定がない場合に確認できること

規定がない状態は、使う側にとっても不利です。判断の根拠がないまま個人が入力し、後で問題になれば入力した本人の判断責任として扱われる余地が残ります。

  • いま使っているのは個人アカウントか、会社が発行したアカウントか——最初に見るのはここ
  • 組織契約があるか——あれば既定で保護される。なければ個人設定に依存する
  • 学習設定の状態——各サービスの設定画面で現在値を確認する
  • 入力しようとしているものの区分——公開情報か、社内限りか、顧客から預かったものか
  • 顧客との契約に守秘義務条項があるか——預かったデータは自社の判断だけで扱えない場合がある

四番目と五番目は設定では解決しません。学習に使われないことと、第三者のデータを外部サービスに送ってよいかは別の問題です。

IT の仕事をしている立場から

この構図は、生成 AI に固有のものではありません。外部のクラウドサービスに社内データを置くときの検討事項と同じ形をしています。

システム開発の現場では、外部サービスを使う前にデータの所在・保存期間・アクセス主体を確認します。無料で使えることと、業務データを預けてよいことは別に扱います。生成 AI もこの枠組みの中にあります。

新しい種類の判断が必要になったというより、既存の情報資産管理の判断対象が一つ増えた、という位置づけで整理するほうが議論は早く進みます。

まとめ

  • 確認する層は三つ——学習利用・人によるレビュー・保存期間
  • ChatGPT の個人向けプランは初期状態で学習に利用。設定でオフにできるが、効くのは以降の会話から
  • Gemini はレビュー済みデータをアカウントと切り離して3年保存、オフでも最大72時間は保存と記載
  • Copilot はプランではなくサインインしているアカウントで扱いが変わる
  • 分かれ目は価格ではなく組織契約かどうか
  • 設定では解決しない論点として顧客から預かったデータの守秘義務が残る

「入れていいか」への答えは、サービス名だけでは決まりません。どのアカウントで、どの契約形態で、何を入れようとしているか——この三つが決まれば、公式の記載を読むだけで判断できる範囲に入ります。

次回 — 設定とカスタム指示で、どこまで防げるか

ここまでは「どういう扱いになっているか」の話でした。実際の運用では、設定画面で切り替えられる項目と、チャットボット側に持たせておくルールの二つで、事故の起きる余地をかなり減らせます。

  • 学習利用・履歴・メモリ・一時チャットは、それぞれ別の設定である
  • カスタム指示(システムプロンプト)に、機密の扱いをあらかじめ書いておける
  • ただしカスタム指示の欄そのものにも注意点がある

次回、ChatGPT・Gemini・Copilot・Claude の4サービスについて、設定項目の場所と、そのまま貼って使える指示文のテンプレートを整理します。

※ 本記事は2026年8月5日時点で公開されている各社の公式ヘルプおよび規約の記載をもとに整理したものです。仕様と規約は改定されます。実際の利用前に必ず最新版をご確認ください。

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