前回、入力したデータがどう扱われるかを各サービスの公式記載で確認しました。今回はその続きで、利用者側の設定で何がどこまで変わるのかを整理します。
調査は2026年8月5日時点です。設定画面の名称と位置は改定されます。実際の操作前に各サービスの最新のヘルプをご確認ください。
※ 本記事は公開されている各社のヘルプ・規約の整理であり、法的助言ではありません。
混同されやすい4つの設定
「学習させない設定」という言い方で語られますが、実際には別々の機能が並んでいます。一つを切っても他は動いたままです。
| 設定 | 効くこと | 効かないこと |
|---|---|---|
| 学習利用 | モデル改善への利用を止める | サーバーへの保存は続く |
| 履歴 | 画面の会話一覧に残さない | 学習利用は別設定 |
| メモリ | 会話をまたいだ記憶の蓄積を止める | その回の入力自体は送信される |
| 一時チャット | 履歴・メモリ・学習をまとめて切り離す | 一定期間のサーバー保存は適用される |
ここを分けて理解しておかないと、「履歴を消したから学習もされない」といった食い違いが起きます。
ChatGPT
| 学習利用 | 設定 → データコントロール →「全員のためにモデルを改善する」 |
| メモリ・カスタム指示 | 設定 → パーソナライズ |
| 一時チャット | チャット画面上部の切り替え |
| 削除 | 会話ごとに削除。アーカイブは削除ではない |
個人向けプランは初期状態で学習に利用される設定です。オフにすると以降の新規会話が対象外になります。設定はアカウント単位で、端末をまたいで反映されます。
削除したチャットは、匿名化済みの場合や法的義務による保持を除き、30日以内にシステムから完全に削除されると記載されています。復元はできません。
一時チャットは履歴にもメモリにも残らず学習にも使われませんが、一定期間のサーバー保存は適用されます。また、有効にしたカスタム指示は一時チャットでも引き続き適用されます。
Gemini
| 学習利用・履歴 | 「Gemini アプリ アクティビティ」でまとめて制御 |
| 保存期間 | 既定18か月。3か月・36か月・自動削除なしに変更可 |
| 音声・画面共有 | 既定ではサービス改善に使用されないと記載 |
Google の記載で押さえておく点が二つあります。一つは人によるレビューを行いながら利用するとされており、レビューされたデータはアカウントと切り離した形で3年間保存されること。もう一つは、アクティビティをオフにしても、サービス提供のため会話は最大72時間アカウントに保存されることです。
個人向けの有料プランでも、この扱いは個人向けの規則が適用されます。
Copilot
| 個人アカウント版 | 設定 → プライバシー → モデル学習の項目 |
| 職場・学校アカウント | 既定で学習対象外。追加設定は不要 |
| Office アプリ内 | 個別の画面はなく、組織側の設定に従う |
Copilot は設定より先に、どのアカウントでサインインしているかを確認するのが順序になります。画面が似ているため、個人アカウントのまま業務で使っている状態が起こりえます。
Claude
| 学習利用 | 設定 → プライバシー → モデル改善の項目 |
| 保存期間 | 学習利用を許可した場合は5年、許可しない場合は30日 |
| 商用プラン | Team・Enterprise・API は学習に使用しないと明記 |
個人向けプラン(Free・Pro・Max)は、利用者が学習利用の可否を選ぶ形になっています。この選択で保存期間が30日と5年に分かれる点が他社と異なります。
公式ヘルプには、設定をオフにした場合の範囲も書かれています。以降の新しい会話は学習に使われなくなりますが、すでに開始された学習や学習済みのモデルからは除外されません。これは他社の「オフにしても遡及しない」という記載と同じ構造です。
カスタム指示に書いておけること
各サービスには、毎回の会話に自動で適用される指示欄があります。呼び方はカスタム指示・システムプロンプトなどさまざまですが、あらかじめ機密の扱いを書いておけるという点は共通しています。
設定が「送信された後の扱い」を決めるのに対し、指示欄は送信の瞬間に気づけるかどうかを変えます。以下は業務利用を想定した文面の例です。そのまま貼って使えます。
1. 機密の伏字化
パスワード・API キー・トークン・個人情報は、私が誤って貼り付けた場合でもそのまま復唱しないでください。該当箇所は伏字で示し、危険であることを先に指摘してください。
2. 外部送信・変更の事前告知
私に何かを実行するよう提案するとき、外部サービスへの送信・ソフトのインストール・ファイルの変更や削除が伴う場合は、実行手順より先にその事実と影響範囲を伝えてください。
3. 推測の禁止と出典の明示
確認できていないことは推測で埋めず、「確認できていない」と明示してください。事実を述べるときは、根拠と、その情報がいつ時点のものかを併記してください。
これは情報漏えいとは別の目的ですが、社内資料に転記する前に誤りを見つけやすくなります。
4. 入力してよいものの線引き
社外秘・顧客から預かった情報が含まれると判断した場合は、回答の前にそれを指摘してください。会社名・取引先名・個人名を伏せた形で進められるなら、その方法を提案してください。
指示欄そのものへの注意
ここが見落とされやすい点です。OpenAI の公式ヘルプには、カスタム指示の使用に関する情報もモデルの性能向上に使用されると記載されています。
つまり指示欄に会社名・取引先名・製品の詳細を書くのは、本文に書くのと同じ扱いになりえます。「所属を伝えたほうが回答が具体的になる」と考えて書き込むと、毎回の会話に自動で乗ることになります。
- 指示欄にはルールだけを書く。固有名詞は書かない
- 業種や役割を伝えたい場合は一般名詞に置き換える(「製造業の設計部門」など)
- 案件固有の情報は、必要な会話にだけ貼る
設定で解決しないこと
ここまでの内容は、いずれも事故が起きる余地を減らすための手当てです。次の二点は設定では解決しません。
- 個人アカウントである限り、会社側は状態を確認できない。誰がどの設定で何を入力したかを組織として把握する手段がない
- 顧客から預かったデータを外部サービスに送ってよいかは、契約の問題である。学習に使われないことと、送信してよいことは別
設定は、組織契約の代わりにはなりません。個人で使う範囲を安全にするための手当てとして有効という位置づけになります。
まとめ
- 学習利用・履歴・メモリ・一時チャットはそれぞれ別の設定
- ChatGPT は個人向けが初期状態で学習に利用。削除は30日以内に完全削除と記載
- Gemini はレビュー済みデータを3年保存、オフでも最大72時間は保存と記載
- Copilot はサインインしているアカウントで扱いが決まる
- Claude は学習利用の可否で保存期間が30日と5年に分かれる
- どのサービスもオフにしても遡及しない
- カスタム指示の欄自体も性能向上に使われると記載。固有名詞を書かない
設定を一通り見ておくだけで、判断に迷う場面はかなり減ります。まずは自分のアカウントの現在値を確認するところからになります。
前回の記事では、そもそも各サービスがどういう扱いをしているのかを整理しています。
※ 本記事は2026年8月5日時点で公開されている各社の公式ヘルプおよび規約の記載をもとに整理したものです。設定画面の名称・位置および仕様は変更されます。実際の操作前に必ず最新版をご確認ください。



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