AI に曲を作らせて、Spotify や Apple Music で配信する。再生されれば収益になる。AI 副業の話題で、最近よく見かける組み合わせです。
質問サイトにも、「AI で作った曲を配信して収益化していいのか」という相談が繰り返し出ています。答えとしてよく見かけるのは「作曲ツールの有料プランなら商用利用できるので大丈夫」という説明です。
本当にそれで足りるのか。関係しそうな文書を読んでみました。以下は 2026 年 9 月 11 日時点で確認した内容です。
関わってくる文書は 3 つありました
AI で作った曲を配信するまでには、少なくとも 3 つの段階を通ります。それぞれに別の文書があります。
| 段階 | 読んだ文書 | 決めていること |
|---|---|---|
| 曲を作る | 作曲 AI の規約・ヘルプ(今回は Suno) | 作った曲を商用に使ってよいか |
| 配信に出す | 配信代行のガイドライン(今回は TuneCore Japan) | 配信を受け付けるか |
| 権利を考える | 文化庁「AI と著作権に関する考え方について」 | その曲に著作権が生じるかの考え方 |
「有料プランなら大丈夫」という説明は、このうち1 段目だけを見たものでした。順に読んでいきます。
作曲ツール側に書かれていたこと
Suno のヘルプセンターには、「Suno は私が作った音楽を所有しているのか」という項目があります(2026 年 1 月 7 日編集)。
判断の目安として書かれていたのは、「その曲を作ったとき、有料プランに登録していたか」という一点でした。
| 作ったときのプラン | 書かれていた扱い |
|---|---|
| 有料(Pro・Premier) | 利用者が曲の所有者とみなされる。解約後も商用利用の権利は残る |
| 無料(Basic) | 曲の所有権は Suno 側。利用者は非商用の目的でのみ使える |
別の項目には、後から有料プランに登録しても、無料で作った曲に商用利用の権利がさかのぼって付くわけではないとも書かれていました(個別に認める場合があるが保証はしない、という書き方です)。
つまり、無料プランで作った曲は、この段階で配信の対象から外れます。ここまでは、よく見かける説明と一致していました。
配信代行のガイドラインは、別の線を引いていました
次に、配信代行の TuneCore Japan です。ヘルプセンターに「AI を使用したリリースに関するガイドライン」という項目がありました。
AI サービスを使ったリリースは、次の要件をすべて満たさない限り、審査で承認されない、あるいは配信が中止・停止される可能性がある、と書かれています。
| 要件 | 書かれていた内容(要旨) |
|---|---|
| 1 | 楽曲が100% AI 生成ではないこと。すべての要素が AI で生成され、人間による作曲などの創作的な表現が生成の前後を問わず一切含まれていない場合を指し、人間がクエリ入力のみを行った場合も含む |
| 2 | 生成と配信に必要な許諾をすべて取得済みで、学習データなどの構成要素に関わる第三者の権利を侵害していないこと |
引っかかったのは、要件 1 の括弧の中です。「人間がクエリ入力のみを行った場合」も、100% AI 生成に含めると書かれています。
作曲 AI に「こういう雰囲気の曲」と指示を打ち込み、出てきた曲をそのまま出す。この形は、このガイドラインの言葉では 100% AI 生成にあたると読めます。
「有料プランで作ったから大丈夫」ではなかった
ここで 2 つの文書を並べてみます。
作曲ツール側は、有料プランで作れば商用に使ってよいとしています。配信代行側は、指示を入れただけの曲は受け付けない可能性があるとしています。
矛盾しているわけではありません。見ている層が違うのです。ツール側が決めているのは「使ってよいか」で、配信代行側が決めているのは「自分たちが扱うか」です。
ですから、有料プランの権利を持っていても、配信代行の審査を通るとは限らないことになります。片方だけ読んで判断すると、ここで食い違いが出ます。
同じ構図は、クラウドソーシングの規約を読んだときにも出てきました。プラットフォームの規約と、案件ごとの条件が別の層にあった話です。
要件 2 は、利用者の側では確かめにくい
もう一つの要件も読んでおきます。
要件 2 は、AI の学習に使われたデータなどに関わる第三者の権利を侵害していないこと、としています。対象として楽曲・歌詞・原盤が挙げられていました。
ただ、作曲 AI が何を学習したかを、利用者が自分で確かめる手段はほとんどありません。この要件を満たしているかどうかは、ツール側の事情に左右される部分です。
海外では、大手レコード会社と作曲 AI の運営会社の間で訴訟や和解が続いていると報じられています。Suno についても、2025 年 11 月に大手レコード会社の一社と和解したと報道されました。ツール側の状況が変われば、この要件の見え方も変わるということです。
著作権の考え方も、同じ方向を向いていました
3 つ目の文書は、文化庁が 2024 年に公表した「AI と著作権に関する考え方について」です。
ここでは、AI で作ったものに著作権が生じるかについて、AI への指示が表現に至らないアイデアにとどまる場合は、著作物にはあたらないという考え方が示されています。
そのうえで、人が創作的に寄与したと言えるかどうかを判断する要素として、指示の具体性、生成を何度も試したかどうか、複数の生成物から選んだかどうか、生成後に手を加えたかどうか、といった点が挙げられていました。
TuneCore の要件 1 とまったく同じことを言っているわけではありません。ただ、「指示を出しただけでは、人の創作とは言いにくい」という方向は共通しています。
なお、文化庁の文書は考え方を整理したもので、個別の曲について判断するものではありません。自分の曲がどうかは、最終的には個別の事情によります。
どこまで手を入れれば「100% ではない」のか
ここがいちばん知りたい部分だと思います。
作詞を自分でした場合、メロディを自分で作った場合、AI の出力を編集した場合。それぞれがガイドラインの「100% AI 生成ではない」にあたるのか、具体的な線引きは、今回読んだ範囲では見つけられませんでした。
ガイドラインにあるのは「人間による作曲等の創作的表現が一切含まれていない場合」という定義だけです。何がどれだけ含まれていればよいかは、書かれていません。
ネット上では「こうすれば通る」という説明も見かけますが、公式の記載ではありません。迷う場合は、配信代行の問い合わせ窓口に出す前に確認するのが確実です。
通ったあとも、止まることがある
もう一つ、見落としやすい一文がありました。
ガイドラインの末尾には、要件をすべて満たしていても、利用規約や配信ストアの基準に基づき、同社の判断で承認しない、または配信を中止・停止する場合がある、と書かれています。
つまり、配信代行の先には、Spotify や Apple Music といった配信ストアそれぞれの基準もあります。そこが変われば、配信中の曲にも影響が出ることになります。
AI 素材の販売サイトが、方針変更で既存の作品まで取り下げた例もありました。今日の条件が続くとは限らないという点は、音楽でも同じだと思います。
読んだ範囲を並べておく
| 文書 | 読んだ箇所 | 書かれていたこと |
|---|---|---|
| Suno ヘルプセンター | 所有権・商用利用の項目 | 有料プランで作った曲は商用可。無料は非商用のみ。さかのぼりは原則なし |
| TuneCore Japan ヘルプセンター | AI を使用したリリースに関するガイドライン | 100% AI 生成(クエリ入力のみを含む)は承認されない可能性。第三者の権利の要件 |
| 文化庁 | AI と著作権に関する考え方について(2024 年) | 指示がアイデアにとどまる場合は著作物にあたらない。創作的寄与の判断要素 |
ほかの配信代行や、各配信ストアの AI に関する方針は、今回は読んでいません。使う配信代行が違えば、条件も違う可能性があります。
まとめ
- AI で作った曲を配信するまでに、ツール・配信代行・著作権の 3 つの文書が関わる
- Suno は有料プランで作った曲なら商用可。無料で作った曲は非商用のみ
- TuneCore Japan は100% AI 生成の曲を承認しない可能性があるとし、そこにクエリ入力のみの場合も含めていた
- 「有料プランなら大丈夫」はツール側だけを見た説明で、配信代行の条件とは別
- 文化庁の考え方も、指示だけでは人の創作と言いにくいという方向
- どこまで手を入れれば足りるかの具体的な線引きは、記載を見つけられなかった
※本記事は 2026 年 9 月 11 日時点で公開されている文書を確認したものです。規約やガイドラインは変更されるため、配信の前に最新の記載をご確認ください。



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