AI で副業を始めると、ChatGPT や Claude の有料プラン、画像生成ツールの月額料金など、毎月の支払いが増えていきます。そこでよく見かけるのが「副業で使っているなら、全部経費にできる」という説明です。
本当にそうなのか。国税庁のタックスアンサーのうち、必要経費、雑所得、減価償却の 3 つのページを読んで、何が書かれているのかを確かめました。3 つとも「令和8年4月1日現在法令等」と書かれたページです。確認は2026年10月21日時点です。
※ 本記事は国税庁が公開している説明を整理したものです。個別の経費や税額を判断するものではありません。筆者は税理士ではなく、以下はすべて公開資料を読んだ結果です。実際の申告では、税務署や税理士に確認してください。
先に全体を並べると
| 気になること | 国税庁のページに書かれていたこと |
|---|---|
| AI ツールの料金は経費になるか | 収入を得るために直接要した費用などが必要経費。AI ツールの名前は出てこない |
| 私用でも使っている場合 | 業務に直接必要だったと明らかに区分できる金額だけが必要経費 |
| 年払いのプラン | その年に債務が確定した金額がその年の必要経費 |
| パソコンなどの機材 | 10 万円未満なら全額その年の経費。それ以上は分けて経費にする |
| 赤字になった場合 | 雑所得の損失は、給与所得などと損益通算できない |
必要経費は「収入を得るために直接要した費用」
タックスアンサー No.2210「必要経費の知識」は、事業所得、不動産所得、雑所得の計算で必要経費にできる金額を、次の 2 つだと説明していました。
一つは、総収入金額に対応する売上原価その他、その総収入金額を得るために直接要した費用。もう一つは、その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用です。
このページに、AI ツールやサブスクリプションという言葉は出てきません。書かれているのは、収入を得るための費用かどうか、という考え方だけです。つまり「AI ツールだから経費になる」「ならない」と決まっているわけではなく、その支払いが副業の収入を得るためのものかで判断する、という読み方になります。
副業の所得そのものの計算や、確定申告が必要になる金額については、国税庁のページを読んだ別の記事にまとめています。
私用と混ざるなら「区分できる金額」だけ
AI ツールの有料プランは、副業の作業だけでなく、ふだんの調べものや趣味にも使えます。この点について、No.2210 の注意事項に関係する説明がありました。
家事上の費用は必要経費になりません。ただ、個人の業務では、一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわる費用になることがあり、これを家事関連費と呼ぶ、と書かれています。そのうえで、家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額に限られるとしていました。
ページの例として挙がっているのは、店舗併用住宅の家賃や水道光熱費などです。AI ツールの例はありません。ただ、副業と私用の両方に使っている AI ツールの料金も、考え方としてはこの「両方にかかわる費用」に当たると読めます。その場合、全額をそのまま経費にするのではなく、副業で使った分を記録などで区分できる部分だけが対象になる、ということです。
「全部経費にできる」という説明は、この「区分できる金額に限られる」という条件を省いていることになります。どの割合なら認められるのか、という具体的な基準は、このページには書かれていませんでした。
年払いのプランは「債務の確定」で年が決まる
AI ツールには、月払いのほかに 1 年分をまとめて払う年払いのプランもあります。経費にする年については、No.2210 に説明がありました。
必要経費になるのは、その年において債務の確定した金額です。その年に支払った場合でも、その年に債務が確定していないものはその年の必要経費にならず、逆に支払っていなくても、その年に債務が確定しているものはその年の必要経費になる、と書かれています。債務の確定には、次の 3 つをすべて満たす必要があるとされていました。
| 要件 | No.2210 の説明 |
|---|---|
| 1 | その年の 12 月 31 日までに債務が成立していること |
| 2 | その年の 12 月 31 日までに、その債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること |
| 3 | その年の 12 月 31 日までに金額が合理的に算定できること |
たとえば年の途中に 1 年分を払った場合、翌年分にあたる期間のサービスについて、2 つ目の要件をどう考えるのか。このページには、年払いのサブスクリプションを例にした説明はありませんでした。支払った年に全額を経費にできると、このページからは言い切れません。
パソコンは 10 万円、20 万円、40 万円で分かれる
AI の副業では、ツールの料金だけでなく、パソコンなどの機材を買うこともあります。タックスアンサー No.2100「減価償却のあらまし」によると、業務に使う器具備品などは、買った年に全額を経費にするのではなく、使える期間にわたって分けて経費にしていくのが原則です。そのうえで、金額によって扱いが分かれていました。
| 取得価額 | No.2100 の説明 |
|---|---|
| 10 万円未満 | 全額を、業務に使い始めた年の必要経費にする |
| 10 万円以上 20 万円未満 | 一定の要件の下で、取得価額の合計の 3 分の 1 ずつを 3 年間で必要経費にできる |
| 10 万円以上 40 万円未満 | 一定の要件を満たす青色申告者は、年 300 万円までを使い始めた年の必要経費にできる特例がある(2026 年 3 月 31 日までの取得は 30 万円未満) |
3 段目の特例は、2026 年 4 月 1 日以後に取得したものから上限が 40 万円未満に上がっていました。ただし対象は青色申告者です。国税庁の所得税基本通達は、青色申告ができるのを不動産所得、事業所得、山林所得を生ずべき業務を行う人としていました。副業の所得が雑所得として扱われる場合、この特例はそもそも使える立場にない、ということになります。
なお No.2100 には、金額の判定で消費税を含めるかどうかは経理の方式によるとも書かれていました。税込で経理していれば、消費税を含んだ金額で 10 万円かどうかを判定します。
経費が増えて赤字になっても、給与とは相殺できない
「経費にすれば税金が戻ってくる」という説明もよく見かけます。ただ、タックスアンサー No.1500「雑所得」の注意事項には、雑所得の金額の計算上生じた損失の金額は、他の所得の金額と損益通算はできないと書かれていました。
副業の所得が雑所得の場合、AI ツールやパソコンの費用で副業が赤字になっても、その赤字で給与所得を減らすことはできない、ということです。経費にできるかどうかとは別に、経費にしたことで何が変わるのかも、所得の種類によって違ってきます。
前々年の収入 300 万円で、記録の扱いが変わる
No.1500 は、副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なものを「業務に係る雑所得」と呼び、2022 年(令和4年)分以後の扱いを説明していました。
前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が 300 万円を超える人は、請求書や領収書など、現金や預貯金の出し入れの際に作成または受け取った書類を保存する必要があります。一方、300 万円以下の人は、その年に実際に収入した金額と支出した費用の額で計算できる、いわゆる現金主義の特例を使えます。ただし、確定申告書にこの特例を受ける旨を書く必要がある、とされていました。
先ほどの家事関連費も「取引の記録などに基づいて」区分することが条件でした。保存の義務がない人でも、AI ツールの請求書や利用の記録を残しておかないと、区分した金額を説明できないことになります。
調べても分からなかったこと
| 疑問 | 今回読んだ範囲での状態 |
|---|---|
| AI ツールの料金を、私用と副業で何割ずつに分ければよいのか | 「明らかに区分できる金額」とあるだけで、割合の基準は書かれていない |
| 年払いのプランを、払った年に全額経費にできるのか | 債務確定の 3 要件の説明のみで、年払いのサブスクリプションの例はない |
| ドル建てで請求される AI ツールの料金を、いつのレートで円にするのか | 今回読んだ 3 つのページには記載なし |
| 自分の AI 副業が雑所得と事業所得のどちらに当たるのか | No.1500 の定義はあるが、個別の判定は書かれていない |
このあたりは、税務署の相談窓口や税理士に、実際の使い方と金額を示して確認するのが確実です。
まとめ
国税庁のページに書かれていたのは、必要経費は収入を得るために直接要した費用であり、私用と混ざる費用は業務に必要だったと明らかに区分できる金額だけが対象になる、ということでした。年払いは債務の確定で年が決まり、パソコンなどは 10 万円未満なら全額、それ以上は分けて経費にします。40 万円未満を一度に経費にできる特例は青色申告者向けで、副業が雑所得なら使えません。
「副業で使っているなら全部経費」という説明は、区分の条件と所得の種類による違いを省いたものでした。経費にできるかどうかの前に、何に、どれだけ副業で使ったかを記録しておくことが、どのページを読んでも前提になっていました。
※ 本記事の内容は2026年10月21日時点で確認した公開情報です。国税庁タックスアンサー No.2210・No.2100・No.1500 と所得税基本通達を読んだ結果であり、個別の取扱いを示すものではありません。


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