AI で作った画像を、T シャツやマグカップ、アクリルキーホルダーにして売る。注文が入ってから作る「受注生産」のサービスを使えば在庫を抱えずに済むので、副業の候補としてよく名前が挙がります。
一方で、Yahoo!知恵袋にはこんな質問が出ています。「BOOTH でダウンロード作品を売っているが、運営からたびたび強制的に非公開にされる。何を見て判断しているのか」。AI のイラストで BOOTH に出品したいが大丈夫か、という相談も時期を変えて出てきます。
売る前に知りたいのは、販売先が AI の画像をどう扱っているかです。私はグッズを売ったことがありません。なので、SUZURI と BOOTH が公式に出している説明を順に読みました。この記事はその記録です。
読んだもの
- SUZURI 公式ヘルプ「画像生成 AI サービスで作成したデザインを利用してアイテム登録をすることはできますか?」ほか、規約違反と権利侵害についての項目
- SUZURI 会員規約 第 8 条(登録禁止情報)
- BOOTH 公式のお知らせ「AI 生成作品に対する、BOOTH における今後の対応とお願い」(2023 年 5 月)
- BOOTH 公式のお知らせ「BOOTH における AI 生成作品への対応強化について」(2025 年 7 月)
販売先の前に、作ったツールの規約がある
最初に押さえておくことがあります。SUZURI の公式ヘルプは、AI で作ったデザインを登録できるかという質問に対して、まず「利用する画像生成 AI サービスの提供元の規約で、商用利用が可能かを確認してください」と答えています。
つまり、売れるかどうかは二段構えです。一段目が画像を作ったツールの規約、二段目が売る場所のルールです。一段目の、画像生成ツールごとの商用利用の条件は、別の記事で読んでいます。この記事では二段目だけを扱います。
SUZURI に書かれていたこと
SUZURI は、画像をアップロードすると T シャツやトートバッグなどのグッズが作られ、注文が入るとサービス側が製造・発送する仕組みです。
AI の画像についての答えははっきりしていました。ツールの規約で商用利用が可能なら、AI で作ったデザインでもアイテムを登録できます。ただし同じヘルプは、ツール側で商用利用が認められていても、SUZURI の会員規約第 8 条に当たるデザインは登録も販売もできないと続けています。
第 8 条に入っているもの
第 8 条は「登録禁止情報」の条文です。公式ヘルプは、その中身を次のように例示しています。
- 犯罪行為に関するもの、それをそそのかしたり手助けしたりするもの
- 第三者の知的財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権など)を侵害するもの
- 第三者の個人情報やプライバシー、肖像権を侵害するもの
- 第三者の名誉や信用を傷つけ、誹謗中傷するもの、脅迫するもの
- 第三者に不快感を与えるもの
権利侵害についてのヘルプは、さらに具体的でした。有名人、キャラクター、ブランド、車、実在する商品の写真やイラスト、ロゴの使用は権利侵害にあたるとして、製作そのものを禁止しています。亡くなって 50 年以内の著名人の写真やイラストも、同じく権利侵害と判断すると書かれていました。
AI の画像で気をつけたいのは、自分では意図しなくても、有名なキャラクターやブランドに似たものが出てくることがある点です。SUZURI のルールは「AI かどうか」ではなく「何が描かれているか」で判断する作りになっています。
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画像だけでなく、タイトルや説明も見られる
もう一つ目を引いたのは、判断の範囲です。ヘルプには、登録されたアイテム、サムネイル画像、タイトル、説明を含めて商品として判断すると書かれていました。画像が問題なくても、タイトルに有名な作品名を入れれば、それだけで引っかかる可能性があるということです。
また、「非公開」に設定していても、規約違反や権利侵害の商品を販売・購入することはできないと明記されています。違反が見つかった場合は、該当商品の販売禁止やアカウントの停止もあり得るとされていました。
BOOTH に書かれていたこと
BOOTH は、pixiv が運営する創作物の販売サイトです。自分で在庫を持って発送する形のほか、ダウンロード販売や、受注生産のグッズ(pixivFACTORY との連携)も扱っています。
BOOTH は AI の作品について、2 回、公式にお知らせを出していました。
2023 年 5 月:差別化されていない作品は検索に出さない
最初のお知らせは、AI の技術で短期間に大量の画像が作られ、一部のユーザーの過剰な出品で、ほかの創作物の販売機会が脅かされているという説明から始まっていました。
そのうえで、主に AI の作品に目立つ「同じ制作技術を使ったことで、ほかと差別化されていない作品」を出品するショップについて、そのショップの全出品物を検索結果に載せないとしています。どこまでなら検索に出るのかという基準は、境界を狙う悪質な行為を防ぐため、公開も回答もしないと書かれていました。
報道によると、この対応は AI に限らず、人が作ったものでも同じ傾向の出品には当てはめるという説明でした。
2025 年 7 月:非公開化とアカウント停止へ
2 回目のお知らせは、最初の対応を続けても状況の改善には至っていないという説明でした。挙げられていたのは、特定の作品や作家を学習したモデルによる、二次創作の範囲を超えた模倣、似た商品の大量出品、停止されたあとにアカウントを替えての再出品などです。
そこで、特定の作品や作家への依拠性が高い商品を出品する行為と、それに準ずる商品を大量・連続的に出品する行為の監視を強化するとしています。報道によると、確認された場合は商品の非公開、ショップの強制非公開、アカウント停止が、段階的に、または即時に行われ、別名義での出品も対象になります。
知恵袋の「たびたび強制非公開にされる」という相談は、この流れの中で読むと位置づけが分かります。判断の基準は公開されていないので、出品者の側から「何を見られたのか」を正確に知る方法は、少なくとも公開情報の中にはありませんでした。
並べてみると
| 項目 | SUZURI | BOOTH |
|---|---|---|
| AI で作った画像の出品 | ツールの規約で商用利用可なら登録できる | お知らせに禁止の記載はない |
| 判断の軸 | 何が描かれているか(第 8 条) | 差別化・依拠性・出品の量 |
| 判断の範囲 | 画像、サムネイル、タイトル、説明 | ショップ単位(全出品物) |
| 基準の公開 | 禁止の例をヘルプで公開 | 検索に出る基準は非公開 |
| 違反時の対応 | 販売禁止、アカウント停止 | 検索除外、非公開、アカウント停止 |
二つを並べると、「AI の画像だから売れない」と書いている販売先はありませんでした。その代わり、SUZURI は描かれている中身を、BOOTH は似たものの量と特定の作品への寄り方を見ています。
副業として「手軽に大量に出品する」やり方は、BOOTH のお知らせが問題にしている出品の形そのものです。枚数を増やすほど、検索から外れる側に近づく可能性がある、というのが読んだ範囲で言えることです。
調べても分からなかったこと
- BOOTH で検索から外れる基準。お知らせ自身が公開しないと書いています
- 何件から「大量」にあたるのか。数の目安はどちらのサービスにも書かれていませんでした
- BOOTH で AI 作品を出品するときの表示設定。今回読んだお知らせには、設定についての記載がありませんでした
- pixivFACTORY 側の個別の規約。今回は BOOTH のお知らせまでで、読めていません
まとめ
- 売れるかどうかは、作ったツールの規約と売る場所のルールの二段構え
- SUZURI は、ツールが商用利用可ならAI のデザインも登録できると公式に案内している
- ただし第 8 条で、有名人・キャラクター・ブランド・実在の商品などは禁止。タイトルや説明も判断の対象
- BOOTH は、差別化されていない作品や大量出品のショップを検索から外し、2025 年からは非公開やアカウント停止まで強めた
- BOOTH の検索の基準は非公開で、出品者の側から正確に知る方法は見つからなかった
「AI の画像は売っていいのか」という問いに、販売先は「AI かどうか」では答えていませんでした。調べた範囲では、何を描いたか、どれだけ似たものを並べたかで判断される、というところまでが言えます。
※この記事は 2026 年 10 月 1 日時点で公開されている SUZURI の公式ヘルプと会員規約、BOOTH の公式のお知らせ、報道記事を読んだ記録です。グッズ販売の実務経験にもとづくものではありません。各サービスのルールは変更されることがあるため、出品前に公式の最新情報を確認してください。



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