AI に下書きを作らせた資料を、会議に出す。提案書に組み込む。取引先に納品する。この段階で何を確認しておけばよいのかを整理します。
調査は2026年8月5日時点です。
※ 本記事は公開されている文化庁等の資料の整理であり、法的助言ではありません。実際の判断は所属組織の法務部門や弁護士等にご確認ください。
問題になるのは「AI が作ったこと」ではない
文化審議会著作権分科会の法制度小委員会は2024年3月に「AIと著作権に関する考え方について」を、7月には「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」を公表しています。
そこで示されている整理はこうです。生成AIによる生成物も、既存の著作物との類似性と依拠性が認められれば、その生成行為や利用行為が著作権侵害となる。
判断されるのはできあがったものが既存の著作物に似ているかと、それに基づいて作られたかの2点です。人が書いた場合と同じ枠組みで見られます。「AIで作ったから侵害になる」でも「AIで作ったから責任を問われない」でもありません。
なお、この文書自体に法的拘束力はなく、現時点の考え方を示すものとされています。
業務での使い方が「依拠性」に当たりやすい
ここが業務利用で気をつける点です。チェックリスト&ガイダンスでは、依拠性が認められやすい状況の例が挙げられています。
- 既存の著作物そのものを生成AIに入力していた
- 既存の著作物のタイトルなど特定の固有名詞を入力していた
- その著作物に接する機会があった
- 生成物が既存の著作物と高度に類似している
上の2つは、業務では自然に発生します。「この資料を参考にして作って」と既存の文書を貼る。「◯◯社の◯◯という資料のような構成で」と固有名詞で指示する。効率のためにやっている操作が、そのまま依拠性の要素として挙げられているものと一致します。
これは「やってはいけない」という意味ではありません。参考にする対象が自社の資料であれば問題は生じにくい。ただ、他社の資料や公開されている記事を貼って似たものを作らせた場合は、話が変わります。
社内向けと社外向けで確認する範囲が違う
| 用途 | 主に問題になる点 |
|---|---|
| 社内資料 | 内容の正確性。誤りが判断材料になる |
| 社外提出・納品 | 正確性に加えて、権利関係と契約条件 |
| 公開物 | 上記に加えて、表示や体裁に関する取り決め |
社内資料であれば、誤りがあっても社内で止まります。一方、納品物に組み込んだ場合は取引先との契約が関わってきます。
業務委託契約には、成果物の権利帰属や第三者の権利を侵害していないことの保証が定められていることがあります。近年は生成AIの利用可否や、利用した場合の申告を定める条項が入っている契約も見られます。契約書を確認せずに組み込むと、後から条項に抵触していたことが分かる場合があります。
「誰が責任を負うのか」
生成AIを使ったかどうかにかかわらず、提出した成果物の責任は提出した側にあります。ツールを提供している事業者が代わりに負うものではありません。
各サービスの規約でも、出力の利用について利用者側の責任とする記載が一般的です。一部のサービスは特定プランで補償制度を設けていますが、条件が限定されており、適用範囲は各社で異なります。「補償があるから確認しなくてよい」という位置づけではありません。
そして業務の場合、対外的な責任を負うのは会社です。個人が使ったかどうかは、社内での扱いの話になります。この構造は生成AIに固有のものではなく、従業員が業務上行った行為一般と同じ形です。
提出前に確認できること
- 何を入力して作らせたか——他社の資料や記事を貼っていないか
- 固有名詞で指示していないか——特定の作品名・製品名を挙げて似せていないか
- 事実関係を確認したか——数字・引用・出典が実在するか。生成AIは誤った情報を出すことがある
- 契約条件を見たか——納品物の場合、AI利用に関する条項の有無
- 記録が残っているか——いつ何を使って作ったか。後から説明を求められたとき
3番目は権利の話とは別ですが、実務では最も頻度が高い問題です。存在しない出典や誤った数値が資料に入ったまま提出されると、権利の問題より先に信用の問題になります。
IT の仕事をしている立場から
ソフトウェア開発では、外部のコードを取り込むときにライセンスを確認します。動くかどうかとは別に、取り込んだ結果として自社の成果物に何が付いてくるかを見る作業です。
生成AIで作った文書も同じ位置にあります。出力そのものより、何を入れて作らせたかのほうが後で効いてきます。入力の記録が残っていれば、問い合わせが来ても経緯を説明できます。
逆に、参考資料を貼って作らせた記憶があいまいなまま納品してしまうと、確認のしようがなくなります。作る速さが上がった分、記録は残しておくほうが安全です。
まとめ
- 判断されるのは既存の著作物との類似性と依拠性。AIで作ったこと自体ではない
- 依拠性の要素として既存の著作物そのものの入力と固有名詞の入力が挙げられている
- 業務での「この資料を参考に」「◯◯のような構成で」は、この形に当たりやすい
- 社内資料と納品物では確認範囲が違う。納品物は契約条件が関わる
- 成果物の責任は提出した側にある。補償制度は条件が限定される
- 実務で頻度が高いのは権利より事実誤り。出典と数字の確認
確認する内容は、AIを使わない場合とほとんど同じです。違うのは、作る速さが上がった分だけ確認が追いつかなくなりやすいという点にあります。
入力するデータの扱いについては、このシリーズの最初にまとめています。
※ 本記事は2026年8月5日時点で公開されている文化庁「AIと著作権について」等の公表資料をもとに整理したものです。これらの文書に法的拘束力はなく、今後の裁判例や技術動向により見直される可能性があるとされています。最新版は各公式サイトをご確認ください。


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