AI を使った副業を調べていると、「AI を使う」側ではなく「AI に教える」側の仕事に行き当たります。アノテーション、データラベリング、AI トレーナーといった名前で募集されている在宅の仕事です。
Yahoo!知恵袋では、この仕事について似た質問が時期を変えて出ています。ひとつは「未経験でも取り組みやすいと知ったが、勉強は必要か。まず実践で経験を積むというのは本当か」というもの。もうひとつは、50 代でパートを探している人が「スカウトメールでアノテーション業務が来た。PC はそれほど得意ではないが、自分にもできるのか」と尋ねているものです。
名前は聞いたことがあるけれど、実際に何をするのか、自分にできるのかが分からずに止まっている形です。私はこの仕事をしたことがありません。なので、実際に出ている募集と公式の説明を順に読みました。この記事はその記録です。
読んだもの
- ランサーズ・クラウドワークスの「AI アノテーション」カテゴリに出ている公開案件
- 求人サイト(Indeed・求人ボックス)に出ている在宅のアノテーション求人
- 海外の AI トレーニング・プラットフォーム DataAnnotation の公式 FAQ(2026 年 10 月 1 日閲覧)
アノテーションとは何をする仕事か
アノテーションは、AI が学習するためのデータに「これは何か」という正解の印を付ける作業です。写真に写っているものに名前を付ける、音声のどこで誰が話しているかを区切る、といった作業がよく例に挙がります。
知恵袋の回答でも、「特に事前の勉強が必要な仕事ではない。この写真は猫だ、とタグを付けていく作業だ」という説明がありました。ただ、募集を実際に読んでいくと、同じ「アノテーション」という名前の下に、性格の違う仕事がいくつも入っていることが分かってきます。
「アノテーション」に入っていた仕事
読んだ募集を、作業の中身で分けると三つになりました。
| 種類 | 作業の例 | 報酬の形 | 募集に書かれていた条件の例 |
|---|---|---|---|
| 分類・ラベル付け | 画像や音声の区切り、話者の識別 | タスク単位・プロジェクト単位 | 作業マニュアルに沿うこと |
| 音声の収録・文字起こしの修正 | 台本の読み上げ収録、AI が起こした文字の修正 | タスク単位・歩合・時給 | 方言の話者、1 日の作業時間の下限 |
| AI の回答の評価(AI トレーナー) | チャット AI の回答の採点、比較、誤りの指摘 | 時給(ドル建て) | 英語力、学歴相当、選考テスト |
知恵袋の「未経験でもできるか」という質問に、一番近いのは上の二つです。三つ目の「AI トレーナー」は、名前は似ていても求められているものがかなり違いました。順に見ていきます。
国内の募集に書かれていたこと
ランサーズの「AI アノテーション」カテゴリには、日本語の自然な会話音声に印を付ける案件が出ていました。音声を聞きながら発話の区間を切り分け、話者を識別するといった作業で、AI の音声認識の学習用データを作るものと説明されています。
クラウドワークスには、特定の方言で書かれた台本を、指定の収録ツールで読み上げるという案件がありました。報酬は有効なタスク 1 件ごとに決まる形です。方言を話せることそのものが条件になっている、という点が目を引きました。
求人サイトには、時給で書かれた募集もあります。フルリモートの非常勤で、医薬の研究に使う生物の画像に印を付けるアノテーターの募集は時給 1,300 円でした。音声の文字起こしと AI の自動文字起こしの修正を行う在宅の募集には、「未経験 OK」と並んで「1 日 6 時間以上」という条件が書かれていました。
「スキマ時間で」という紹介をよく見かけますが、募集によっては作業時間の下限が決まっていることがあります。応募する前に、報酬の形と時間の条件を一緒に読む必要がありそうです。
AI トレーナーの募集に書かれていたこと
三つ目の「AI トレーナー」は、日本の求人サイトにも出ています。英語から日本語への翻訳者を対象にした完全在宅の募集では、時給 3,600 円相当〜(25 米ドル以上)と書かれていました。報酬がドルで示されているのは、募集元が海外のプラットフォームだからです。
こうしたプラットフォームの一つ、DataAnnotation の公式 FAQ を読みました。仕事の中身は、チャット AI の回答を評価する、複数の回答を比べる、事実の誤りを指摘する、難しい質問を書くといったものです。FAQ 自身が「ただクリックするだけの作業やデータ入力ではない」と書いています。
| 分野 | FAQ に書かれていた時給 | 書かれていた条件 |
|---|---|---|
| 一般 | 25 ドル〜(30 ドル以上・50 ドル以上の二通りの表記あり) | 大学卒業または同等の経験、文章力と批判的思考 |
| 多言語 | 20 ドル〜 | 英語に加えて、別の言語を母語として使えること |
| コーディング | 40〜150 ドル以上 | Python などのプログラミング経験 |
| 理系分野・専門職 | 40〜125 ドル以上 | 修士・博士、または学士と 10 年以上の実務経験、法律・金融・医療の資格 |
一般分野の時給は、FAQ の中でも「25〜30 ドル以上」と「25〜50 ドル以上」の二通りで書かれていました。どちらにしても、出発点は 25 ドル前後です。
条件のほうで目を引いたのは次の点です。
- 全員に英語の流暢さが求められる。多言語の分野でも、英語に加えて別の言語が条件になっている
- 最初の選考テストは 1 回しか受けられない。FAQ には、再受験はできないので提出前によく見直すよう書かれている。所要時間はおよそ 1 時間
- 仕事の量は保証されていない。専門性と過去の作業の質によって、割り当てられる案件が変わると書かれている
- 報酬は PayPal で受け取る。登録には顔写真付きの身分証による本人確認がある
つまり、時給が高く見える仕事ほど、英語力・学歴・専門性という条件が先に付いているということです。国内の「未経験 OK」の募集とは、入口の位置がかなり違いました。
なお、FAQ にはどの国に住んでいる人が対象になるのかの記載は見つけられませんでした。日本から登録できるかどうかは、申し込みの画面で確かめる必要があります。
英語を使う仕事の条件という意味では、翻訳の副業で「AI が訳したものを人が確かめる」仕事が増えていた話と重なります。そちらは別の記事で読んでいます。
始める前に確かめておくこと
読んだ範囲で、仕事の中身とは別に確かめておきたいことが三つありました。
一つ目は、雇用ではなく業務の委託であることが多い点です。海外のプラットフォームでは働き手は「請負の契約者」と位置づけられていて、時給で払われても会社に雇われるわけではありません。国内のクラウドソーシングの案件も同じく委託です。
二つ目は、受けた場所のルールです。クラウドソーシングで受ける場合は、サービスの規約と個々の発注条件が先に来ます。AI の利用や守秘についての規約の読み方は、別の記事で整理しています。
三つ目は、申告です。ドルで PayPal に入った報酬も、日本に住んでいれば所得として扱われます。副業の所得がいくらから申告が要るのかは、国税庁のページを読んだ別の記事にまとめています。
調べても分からなかったこと
- タスク単位の案件を時給に直すといくらか。1 件あたりの作業時間は人によって違い、募集にも書かれていませんでした
- 海外プラットフォームに日本から登録できるか。今回読んだ FAQ には、対象となる国の記載がありませんでした
- 仕事がどれくらい継続して来るか。FAQ は質と専門性次第と書いていて、量の目安は示されていません
- アノテーションの仕事全体の件数や相場。公的な統計は見つけられませんでした
まとめ
- アノテーションは、AI の学習データに正解の印を付ける仕事
- 同じ名前の下に、分類・ラベル付け、音声の収録や修正、AI の回答の評価という性格の違う仕事が入っていた
- 国内の在宅募集には時給 1,300 円の例や、「1 日 6 時間以上」という条件の例があった
- 海外の AI トレーナーは時給 25 ドル前後からだが、英語力・学歴相当・1 回限りの選考テストが先に来る
- どれも雇用ではなく委託が中心。ドルの報酬も日本では所得として扱われる
「未経験でもできる」と「時給 25 ドル以上」は、どちらも募集に書かれていることですが、指している仕事が別でした。調べた範囲では、未経験から入れる仕事と、条件をそろえて入る仕事が同じ名前で並んでいる、というところまでが言えます。
※この記事は 2026 年 10 月 1 日時点で公開されているクラウドソーシングの案件、求人サイトの募集、DataAnnotation の公式 FAQ を読んだ記録です。アノテーションの実務経験にもとづくものではありません。募集の内容と報酬は随時変わります。





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