会社に勤めながら AI で副業を始めると、売り上げより先に気になってくるのが税金のことです。中でも質問サイトに繰り返し出てくるのが、住民税の相談でした。
たとえばこんな質問がありました。「会社の住民税は給与から天引き、業務委託で得た報酬の住民税は自分で払う。自分で払う分は会社を通らないので、会社には知られない。この理解でいいのか」。回答では「確定申告で自分で納付を選べばいい」という説明が多く見られます。
このブログでは以前、副業の所得税の申告と、副業禁止の就業規則について国の資料を読みました。そのどちらでも、住民税は「お住まいの自治体に確認する」ところで止まっていました。そこで今回は、市区町村の公式ページを何か所か開いて、住民税の納め方について何が書かれているのかを確かめました。確認は2026年10月21日時点です。
※ 本記事は自治体が公開している説明を整理したものです。個別の税額や手続きを判断するものではありません。筆者は税理士ではなく、以下はすべて公開資料を読んだ結果です。扱いは自治体によって異なるため、最終的にはお住まいの市区町村に確認してください。
先に全体を並べると
分かれ目は二つありました。副業の所得が給与かどうかと、申告書で「自分で納付」を選んだかどうかです。
| 副業の受け取り方 | 「自分で納付」を選んだ場合 | 何も選ばなかった場合 |
|---|---|---|
| 業務委託の報酬、作品の販売など(給与以外の所得) | 副業分の住民税は自分で納付(普通徴収) | 本業の給与からの天引きにまとめられる場合がある |
| アルバイトなど、別の勤務先から受け取る給与 | 2026年度分から、本業の給与からの天引きにまとめると説明する自治体がある | 本業の給与からの天引き |
AI 副業の多くは、業務委託の報酬や、作ったものの販売で収入を得る形です。この場合は上の段に当たります。一方、AI に関わる仕事でも、アルバイトとして雇われて給与を受け取る形なら下の段です。同じ「AI 副業」でも、受け取り方によって扱いが変わります。
会社員の住民税は、もともと会社を通して払っている
前提として、住民税の納め方には二つあります。福岡県筑紫野市のページは、給与から天引きされる「特別徴収」と、納付書や口座振替で自分で納める「普通徴収」の 2 種類だと説明していました。
給与をもらっている人は特別徴収が基本で、勤務先が従業員の給与から住民税を天引きし、本人に代わって市に納める仕組みです。つまり会社員の住民税は、ふだんから会社の給与計算を通っています。
副業の所得を申告すると、その分も住民税の計算に入ります。東京都北区のページには、納め方の希望を書かなかった場合、給与からの特別徴収にまとめて納めてもらう場合があると書かれていました。副業の分が本業の給与からの天引きに上乗せされる、ということです。質問サイトで「住民税で気づかれる」と言われているのは、この部分だと読めます。
「自分で納付」の欄は、確定申告書の第二表にある
副業の分だけを分けて納めたい場合の方法は、どの自治体のページもほぼ同じ説明でした。
所得税の確定申告書の第二表の下のほうに「住民税・事業税に関する事項」という欄があり、その中に「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」という選択欄があります。ここで「自分で納付」に丸を付けると、給与以外の所得にかかる住民税は普通徴収になる、という説明です。兵庫県西宮市のページは、全部を給与から天引きにする場合は「特別徴収」、給与以外を普通徴収にする場合は「自分で納付」を選ぶ、と分けて書いていました。
西宮市のページによると、所得税の確定申告をせずに市・県民税の申告書を出す場合も、申告書のおもて面に同じような選択欄があるそうです。東京都足立区のページも、確定申告書の欄か、区の住民税の申告書の「納付方法」欄で希望を選ぶよう案内していました。
20 万円以下でも、住民税の申告は残る
ここで、よく聞く「副業は 20 万円以下なら申告しなくていい」という話とぶつかります。
東京都目黒区の FAQ は、所得税では給与所得以外の所得が 20 万円以下なら確定申告は要らないとしたうえで、住民税には源泉徴収の仕組みがないことなどから、給与所得と合わせて申告する必要があると答えていました。東京都小平市の FAQ はさらにはっきりしていて、給与所得以外の所得がある場合は、所得の多い少ないにかかわらず申告が必要だと書いています。
神戸市のページでは、住民税の申告は毎年 2 月 1 日から 3 月 15 日までで、所得税の確定申告書を出した人は不要、とされていました。つまり、所得税の確定申告をしないなら、住民税の申告を別に出すという関係です。「自分で納付」を選ぶ欄も、この申告のどちらかに付いています。何も出さなければ、選ぶ場面そのものがありません。
所得税の側の「20 万円」の条件は、国税庁のページを読んだ別の記事にまとめています。
2026年度から、給与の副業は「自分で納付」にできなくなっていた
今回読んでいて、いちばん大きな変化だと感じたのがこの点です。
東京都中野区のページによると、2026年度(令和8年度)の住民税から、2 か所以上から給与を受け取っている場合、給与にかかる住民税はすべて主たる給与の勤務先からの特別徴収になりました。それまでは、確定申告書で「自分で納付」を選べば、副業先の給与の分は普通徴収にする対応を取っていた、とも書かれています。静岡県富士市のページも、2026年度分から同じ扱いになると説明していました。
中野区は変更の理由として、地方税法では普通徴収にできるのが「給与所得以外の所得に係る所得割額」と定められていて、給与所得を特別徴収と普通徴収に分けることは規定されていない、と説明しています。大阪府門真市も同じ変更について、地方税法に沿った取り扱いにするためだと書いていました。
| 自治体 | 給与が 2 か所以上ある場合の扱いが変わった時期 |
|---|---|
| 東京都足立区 | 2023年度(令和5年度)分から |
| 東京都中野区 | 2026年度(令和8年度)分から |
| 静岡県富士市 | 2026年度(令和8年度)分から |
時期が自治体によって違う点にも注意が要ります。ネット上の解説には「アルバイトの副業でも自分で納付を選べる自治体がある」と書かれたものがありますが、少なくとも今回読んだ自治体では、給与の副業を分けて納める扱いはなくなっていました。
「自分で納付」を選んでも、天引きになる場合
給与以外の所得でも、選べば必ず分けられるわけではありませんでした。
中野区のページには、「自分で納付」を選んでも特別徴収になる場合として、申告した所得がマイナスの場合と、申告した所得より、追加で申告した控除のほうが大きい場合が挙げられていました。北区のページにも、給与以外の所得がマイナスの場合は分けられないと書かれています。
AI 副業を始めたばかりで、ツールの利用料などの経費が売り上げを上回り、所得がマイナスになる年もあり得ます。その場合は、分けて納める税額そのものが出てこない、という扱いだと読めます。
「会社に知られない」とは書かれていなかった
読んだ自治体のページは、どれも住民税をどう納めるかの説明でした。「自分で納付」を選べば副業の分は普通徴収になる、というところまでは書かれています。ただ、それで会社に副業が知られない、と保証する記載はどこにもありませんでした。自治体のページが説明しているのは納め方であって、会社に何が伝わるかではない、ということです。
そもそも、会社が副業をどう扱うかは、住民税ではなく就業規則の問題です。副業禁止の会社で副業をした場合については、厚生労働省のモデル就業規則とガイドラインを読んだ記事にまとめています。
調べても分からなかったこと
| 疑問 | 今回読んだ範囲での状態 |
|---|---|
| 全国の自治体が、給与の副業を同じように扱っているのか | 読んだのは一部の自治体のみ。変更の時期も自治体ごとに違った |
| 勤務先に届く住民税の通知に、副業の所得がどこまで表れるのか | 自治体のページには記載なし |
| AI 副業の収入が、給与・雑所得・事業所得のどれに当たるのか | 契約の形によって変わるため、自治体のページからは判断できない |
| 申告書で選択を書き忘れた場合に、あとから変えられるのか | 今回読んだページには記載なし |
住民税の扱いは、2026年度のように制度の運用が変わることがあります。申告の前には、お住まいの市区町村のページをあらためて確認してください。
まとめ
読んで分かったのは、業務委託や販売で得た AI 副業の所得なら、確定申告書の第二表で「自分で納付」を選ぶと、その分の住民税は普通徴収になるということ。一方で、アルバイトなど給与として受け取る副業は、2026年度分から本業の給与からの天引きにまとめると説明する自治体があったこと。そして、所得税の確定申告が要らない 20 万円以下でも、住民税の申告は別に必要だと書かれていたことでした。
質問サイトにあった「自分で払う分は会社を通らないので知られない」という理解については、納め方の説明としては自治体のページと合っていました。ただし、所得の種類や自治体によって選べない場合があり、「会社に知られない」とまで書いた公式の記載は見つかりませんでした。今回の資料から言えるのは、ここまででした。
※ 本記事の内容は2026年10月21日時点で確認した公開情報です。各自治体の公式ページを読んだ結果であり、すべての自治体の扱いを確認したものではありません。



コメント